2050年、世界の半分が近視になる?

教室を見渡すと、メガネをかけた子どもがたくさんいます。親の世代より明らかに多く見えます。
気のせいではありません。研究者たちは、近視が世界中で急速に増えていると考えています。
数字で見ると
2016年に学術誌 Ophthalmology に掲載されたホールデン(Holden)らの論文は、145の研究、210万人分のデータをまとめて、世界の近視人口を推計しました。
- 2000年:近視は約14億600万人(世界人口の22.9%)
- 2050年の予測:近視は約47億5,800万人(世界人口の49.8%)
強度近視も増えると予測しています。2000年の1億6,300万人(2.7%)から、2050年には9億3,800万人(9.8%)になるという予測です。論文は、約10億人にのぼる強度近視の人の合併症や視力低下を管理・予防するための体制を、今から計画する必要があると結論づけました。
米国眼科学会(AAO)も、2050年には世界の人口の半分近くが近視になると紹介しています。
遺伝だけでは説明できません
親が近視だと子どもも近視になりやすい、という話を聞いたことがあるでしょう。ホールデンらも、遺伝的な素因が関わっているようだと書いています。
しかし論文は、遺伝だけでは短い期間に起きた変化を説明できないとしています。遺伝子は1~2世代で大きく変わるものではないからです。
そのため論文は、近視の増加は主に環境要因、とくに屋外で過ごす時間が減り、近くを見る作業が増えた生活の変化によるものと広く考えられていると説明しています。シンガポール、韓国、台湾、中国のように幼いころから学業の負担が大きい教育環境や、近くで使う電子機器の使いすぎも、原因の候補として挙げています。
屋外で過ごす時間を増やした試験

原因の候補のうち、実際の試験で確かめられているのが屋外活動です。
中国・広州の研究(2015年、米国医師会雑誌 JAMA)
12の小学校の1年生(6~7歳)1,903人を2つのグループに分けました。一方の学校では、毎日40分の屋外活動の授業を加えました。3年後、新たに近視になった子どもの割合は次のとおりでした。
- 屋外活動を加えたグループ:30.4%
- ふだんどおりに過ごしたグループ:39.5%
**台湾の学校での研究(2018年、Ophthalmology)**
16校の1年生693人が参加しました。プログラムを行った学校では、休み時間に教室の外へ出るよう促し、屋外で週に最大11時間過ごすようにしました。1年後、近視の方向へ進んだ度合いは、プログラムのグループが0.35ディオプター、比較グループが0.47ディオプターで、プログラムのグループのほうが小さくなりました。すでに近視の子どもにも、まだ近視でない子どもにも効果が見られました。
この研究には、もう一つ注目したい結論があります。研究チームは、強い日差しの下にいる必要はないかもしれないと述べています。廊下や木陰のような少し暗い場所でも、屋外で長く過ごすことを考えてよいと書いています。
AAOも、室内で過ごす時間が長すぎると子どもの近視のリスクが高まり、自然光の下で屋外にいる時間が長いほどリスクが下がるという研究を紹介しています。
画面は原因なのか

ここは注意が必要です。AAOは、パソコンやゲーム、読書のように近くを見る活動をたくさんする子どもは近視の割合が高いという研究を紹介しながらも、直接の因果関係は証明されていないとはっきり書いています。
そのためAAOの勧めは、2つのことを同時に言っています。屋外で過ごす時間を増やすこと、そして画面を見る時間を減らすことです。
近視が増えると何が問題なのか
近視そのものは、メガネやコンタクトレンズで矯正できます。問題は近視が強くなったときです。AAOは、強度近視の人は網膜剥離、緑内障、白内障などの目の病気のリスクが高くなると説明しています。
そのため最近は、子どもの近視がどれだけ速く進むかに関心が集まっています。AAOは、低濃度アトロピン点眼薬、近視の進行を遅らせるよう設計された特殊なソフトレンズ、そして夜に装用するオルソケラトロジーレンズを紹介しています。オルソケラトロジーは次の記事で取り上げます。
まとめ
- 近視は世界中で増えており、2050年には人類の半分近くが近視になるという予測があります。
- 遺伝だけではこの速さを説明できず、生活の変化が主な原因として挙げられています。
- 子どもが屋外で過ごす時間を増やすことは、試験で効果が確かめられた方法です。
- 近視の進行を遅らせる方法は子どもによって合うものが違うので、眼科医に相談してください。
メガネとコンタクトの度数がなぜ違うのかは、同じ目なのに、メガネとコンタクトレンズの度数はなぜ違うのかで説明しました。
参考資料
- Holden BA ほか、Global Prevalence of Myopia and High Myopia and Temporal Trends from 2000 through 2050、Ophthalmology 2016;123:1036-1042
- He M ほか、Effect of Time Spent Outdoors at School on the Development of Myopia Among Children in China、JAMA 2015
- Wu PC ほか、Myopia Prevention and Outdoor Light Intensity in a School-based Cluster Randomized Trial、Ophthalmology 2018;125:1239-1250
- 米国眼科学会(AAO)、Nearsightedness: What Is Myopia?
- 米国眼科学会(AAO)、Myopia Control in Children
この記事は一般的な情報であり、診断や治療に代わるものではありません。子どもの視力の変化は、眼科の専門家の検査を受けてください。