毎日新しいレンズを捨てる習慣は、どうやって世界に広まったのか

朝に新しいレンズを開けて、夜に捨てる。今では当たり前に感じられます。
しかし、ソフトレンズが初めて登場したころ、レンズは気軽に捨てるものではありませんでした。1組のレンズを長く使い、毎日洗って消毒しました。たんぱく質の汚れを落とすのにも別の手入れが必要でした。レンズをなくしたり破いたりするのは、小さな事故ではありませんでした。
1980年代半ばまで、問題は「どのくらいの間隔で新しいレンズを買うか」よりも、「この1組をどれだけ上手に手入れして長持ちさせるか」でした。
この問いを変えたのは、新しい素材ひとつではありません。同じ品質のレンズを大量に、くり返し作れる製造工程と流通のしくみでした。
レンズを製品ではなく工程として見る
ソフトレンズは小さく薄いのに、中心の厚み、カーブ、ふち、度数がすべてそろっていなければなりません。一枚ずつ多くの人の手を経て作っていては値段は下がらず、頻繁な交換は現実的ではありません。
ビスタコン(Vistakon)は製造工程を標準化し、同じ仕様のレンズを大量に作るしくみを整えました。ジョンソン・エンド・ジョンソンがこの会社を買収したあとにアキュビュー(ACUVUE)ブランドが登場し、1987年、アメリカ市場で交換型ソフトレンズを広く知らしめました。
初期のアキュビューは、今の「一度つけたら捨てる」製品と同じではありませんでした。決まった期間つけたあとに交換するレンズでした。最初の「使い捨て」は1日ではなく、それまでより短い交換周期を意味していたのです。
最初の交換型レンズと最初の1日使い捨てレンズを同じ製品のように語ると、歴史を単純にしすぎてしまいます。
1日使い捨てと1か月用の比較は、1日使い捨てと1か月用のコンタクトは、パッケージが違うだけなのかで取り上げました。
新しいレンズを開けることが手入れになる
交換の周期が短くなると、レンズの表面に汚れがたまる時間が短くなります。
古いレンズの傷やゆがみを管理し続ける代わりに、決まった日に新しいレンズを開けます。メーカーは一定の基準でより多くのレンズを作らなければならなくなり、販売も1組単位から、たくさんのレンズが入った箱単位へと移りました。
この変化によって、カレンダーと処方が買い物の一部になりました。1箱に何枚入っているか、左右の度数が同じか、週に何日つけるか。そのすべてで必要な箱の数が変わります。
「1日」「2週間」「1か月」は素材の寿命ではありません。メーカーが定め、規制当局が審査した交換スケジュールです。勝手に延ばしてよい使用回数ではありません。
1日使い捨てはレンズケースをなくした
一度つけたら捨てるレンズが広まると、手入れの一部がまるごと消えました。
毎日新しいレンズを使えば、夜に保管するためのケースも保存液も要りません。古い液に継ぎ足す、ケースを乾かさないといった失敗も一緒になくなります。
だからといって、手洗い、有効な処方、装用時間、レンズに水をつけないといった基本のルールまで消えるわけではありません。1日使い捨てのレンズを外して保管し、またつける、あるいは翌日にもう一度使うのは、この形式の前提を壊すことです。
もう一つのコストがあります。包装です。毎日2つのブリスターとそのふたのフィルムが出ます。くり返し使うレンズは、代わりに保存液のボトルとケースを使います。どちらがつねに環境によいと結論づけるのは簡単ではありません。
交換周期は生活に合っていなければならない
毎日レンズをつける人と、週末にだけつける人とでは、計算が違います。
1か月用のレンズは、ふつう開封から1か月で交換するスケジュールです。10回しかつけていないからといって、使い続けてよいわけではありません。週に1~2回しかつけない人には、手入れの面でもごみの面でも、1日使い捨てのほうが簡単なことがあります。
費用も、箱の値段だけでは正確にわかりません。くり返し使うレンズには、保存液、ケース、手入れの時間がついてきます。1日使い捨てには、より多くのレンズと包装がついてきます。
交換型レンズの成功は、「どうせ新しいから」という安心感も生みました。しかし新しいレンズでも、洗っていない手で扱ったり、水にさらしたり、つけたまま眠ったりすればリスクがあります。
1980年代の変化が残した最大のものは、1枚のレンズの素材ではなく、交換するという習慣です。重心は、1枚のレンズを長く保つ技術から、決まった時期に惜しまず取り替える手入れへと移りました。
箱に書かれた1日、2週間、1か月は広告の文句ではありません。その習慣の時刻表です。
「使い捨て」という言葉が生んだ混乱
国や時代によって、「使い捨て」が指す交換周期は違っていました。ある市場では1~2週間での交換を意味し、のちに1日使い捨てが広まると、ほとんど1日装用の同義語のように使われるようになりました。あるブランドが初めて登場した年と、そのブランドの1日使い捨て製品が出た年は違うことがあります。
今でも、名前から交換スケジュールを推測しないでください。一つのブランドに、1日用、2週間用、1か月用の製品が並んでいることもあります。交換が手軽になったことで、スポーツや旅行のときだけレンズを使う人も選びやすくなりましたが、販売者は度数、カーブ、数量をより正確に管理しなければならなくなりました。使い捨てレンズの歴史は、作ることと買うことの時刻表がどう変わったかの歴史でもあります。
レンズ1枚がどう作られるかは、コンタクトレンズはなぜこんなに高いのかにあります。
参考資料
- FDA、ACUVUE approval record (N18033)
- Johnson & Johnson Vision、History of the ACUVUE Brand
- FDA、List of Contact Lenses
製品ごとに承認された交換スケジュールがあります。箱の表示、添付文書、眼科の専門家が決めたスケジュールに従ってください。